シンガポール移住と就労ビザ取得の全知識|EP・Sパスの条件から最新の審査基準まで徹底解説
- シンガポール
- 著者:T.I
- 投稿日:2026/03/11
シンガポールへの移住を実現するために避けて通れないのが、就労ビザの取得です。東南アジアのビジネスハブとして知られるシンガポールは、高度なスキルを持つ外国人に対して門戸を開いていますが、その基準は年々厳格化されています。
デジタルマーケターとして市場動向を分析し、自身も海外での活動経験を持つ私、T.Iが、現地の採用担当者や実際にビザを取得して就労している日本人への取材をもとに、シンガポールの就労ビザの「今」を詳しく解説します。公的機関(MOM)のデータに基づいた正確な条件と、現場でしか得られない取得戦略をお伝えします。
目次
シンガポール移住に就労ビザが必要な理由
シンガポールは非常に厳格な移民政策をとっています。日本人が観光目的で入国する場合は、最大90日間の滞在が可能ですが、その期間中に報酬を伴う仕事をすることは法律で禁じられています。現地で生活費を稼ぎ、居住実態を証明して生活を送るためには、必ず目的(就労、起業、投資など)に合った適切なビザを取得しなければなりません。
特にシンガポール政府は「自国民の雇用を守ること」を最優先事項としており、外国人を雇用する企業には「その外国人がシンガポール人では代替不可能な高いスキルや経験を持っていること」を証明する責任を課しています。このため、ビザの申請は個人ではなく、雇用主となる企業が行う仕組みになっています。
まず結論|シンガポール移住の就労ビザ取得は難しいのか
結論から申し上げますと、シンガポールの就労ビザ取得は「数年前に比べて格段に難易度が上がっているが、特定のスキルや高い給与条件を満たせば依然として可能」です。
かつては「日本での社会人経験があれば取れる」と言われた時代もありましたが、現在は最低給与額の引き上げや、COMPASS(コンパス)と呼ばれる新しい評価制度の導入により、学歴、職歴、企業の多様性などが総合的にスコア化されます。単なる「労働力」ではなく、シンガポールの経済に貢献できる「高度人材」であることが厳しく問われる時代になっています。準備なしに現地採用での転職を目指すのはリスクが高いため、まずは制度の全体像を正確に把握することが移住成功の第一歩です。
シンガポール移住で取得できる主な就労ビザ(EP・Sパス)
日本人が現地採用や駐在でシンガポールへ移住する際に取得する代表的なビザは、主に以下の2種類です。
エンプロイメントパス(Employment Pass / EP)
管理職、役員、専門職向けのビザです。学歴や職歴、給与額が最も重視されるビザであり、多くのホワイトカラー職種がこれに該当します。大きな特徴として、雇用企業側に「外国人枠(クォータ)」の制限がない点が挙げられます。ただし、後述するCOMPASS制度の審査を通過する必要があります。
Sパス(S Pass)
中堅技能レベルのスタッフ向けのビザです。EPに比べて最低給与条件は低いものの、企業側に「外国人雇用枠の制限(クォータ)」があるため、採用する企業側に空き枠がなければ申請すらできません。また、企業はSパス保持者一人につき「外国人雇用税(レビー)」を政府に納める義務があるため、企業側にとってはコストがかかるビザでもあります。
シンガポール移住の就労ビザ取得条件(年収・学歴・職歴)
シンガポール人材開発省(MOM)が定める、2025年から2026年時点での最新基準を整理しました。年齢が上がるほど、求められる最低年収も高くなる「スライド制」が採用されています。
| 項目 | EP(エンプロイメントパス) | Sパス(S Pass) |
|---|---|---|
| 最低月額給与 | 5,000 SGD以上(金融部門は5,500 SGD) | 3,150 SGD以上(金融部門は3,650 SGD) |
| 年齢による加算 | 40代中盤では10,500 SGD以上が必要 | 年齢に応じて段階的に上昇 |
| 主な学歴要件 | 原則として、認可された大学の学位以上 | 学位、または認定されたディプロマ |
| COMPASS評価 | 必須(40ポイント以上の獲得が必要) | 対象外(枠と給与のみで判断) |
重要|COMPASS(コンパス)制度の評価項目
2023年9月から導入されたEP向けのポイント制評価システムです。以下の4つの基本項目を総合し、40ポイント以上を獲得しなければEPは発行されません。
- C1 給与(Salary)
- 申請者の給与を、同じセクター(業種)で働く現地居住者の給与水準と比較して評価します。0点から20点の範囲で算出されます。
- C2 資格(Qualifications)
- 出身大学のランクに基づき評価されます。政府指定のトップ校であれば高得点が得られる仕組みです。0点から20点の範囲で算出されます。
- C3 多様性(Diversity)
- 雇用企業の全スタッフに占める申請者の国籍割合を評価します。特定の国籍に偏っていないかが見られます。0点から20点の範囲で算出されます。
- C4 現地人雇用(Support for Local Employment)
- 企業がどれだけシンガポール人を雇用しているか、その割合や改善姿勢を評価します。0点から20点の範囲で算出されます。
シンガポール移住で就労ビザを取得する主な方法
具体的にどのようなルートでビザを取得し、移住を実現するか、主な3つのパターンを紹介します。
1 日本からの現地採用(転職)
シンガポールにある日系企業や外資系企業に直接応募し、内定を得る方法です。エージェントを通じて「EPが発行可能な案件か」を事前に確認することが必須です。現在、最も一般的ですが、ビザ基準の高騰によりIT、金融、専門コンサルなどの高年収職種に有利な傾向があります。
2 社内公募・駐在員として赴任
日本国内の企業に所属し、シンガポール支社へ異動する方法です。ビザの申請主体が自社になるため、現地採用よりはスムーズですが、それでもMOMの審査基準を満たさない場合は却下されるリスクがあります。
3 シンガポールでの起業
自ら会社を設立し、自分自身に就労ビザを発行する方法です。ただし、近年は形だけの会社設立によるビザ取得に対する取り締まりが厳しく、事業の実態や資本金、現地人の雇用計画が厳格にチェックされます。
取材でわかったシンガポール移住のリアルな就労ビザ取得事例
現地の最前線で起きている、ビザ取得にまつわるリアルな事例を紹介します。
事例1 30代ITエンジニア(現地採用・EP取得)
日本のメガベンチャーからシンガポールのテック企業へ転職したAさんは、月給8,500SGDでEPを申請しました。学歴がMARCHレベルの大学だったためCOMPASSのポイントが不安でしたが、希少スキルの加点もあり、無事に承認されました。IT職種は依然として優遇されている実感があるとのことです。
事例2 20代後半・営業職(現地採用・Sパス取得)
月給4,500SGDで日系企業の営業職に内定したBさん。当初EPで申請しましたが却下され、会社にSパスの枠があったため再申請して通過しました。ただしSパスでは家族帯同ビザを申請するための給与基準(月6,000SGD)に届かず、単身での移住となった事例です。
事例3 40代後半・マネージャー職(駐在・EP再申請)
日本での給与体系をそのまま持ち込もうとしたCさんは、年齢に対して月給が低いと判断され、一度差し戻されました。会社側と相談し、現地での手当を増額して月給11,000SGDとして再申請したところ、ようやく承認されました。
事例4 人事担当者が語る外国人雇用の本音
現地の採用担当者によると、今はCOMPASSのスコアがシステムで自動判別されるため、基準に届かない人は書類選考の段階で見送らざるを得ないそうです。特に、日本人ばかりを雇っている企業は「多様性」の項目で点数が取れないため、日本人採用のハードルがさらに上がっているのが現状です。
シンガポール移住の就労ビザメリット・デメリット
就労ビザを取得して移住することの利点と、契約上の制約を整理しました。
| メリット | デメリット・制約 |
|---|---|
| 高水準な給与と低い所得税率 | ビザがその企業に紐付いているため、解雇=強制帰国 |
| 家族帯同ビザ(DP)により家族全員で移住可能(※) | 転職するたびにビザの新規申請と審査が必要 |
| 将来的な永住権(PR)申請へのステップになる | 最低給与基準が頻繁に上がり、更新時にリスクがある |
| グローバルな環境でのキャリアアップ | 副業が原則禁止されている(ビザの目的に反するため) |
※DP取得には月給6,000SGD以上の条件があります。
シンガポール移住で就労ビザを取得するための戦略
難易度が上がる中で、確実にビザを勝ち取るための具体的な戦略です。
1 自分の「想定スコア」を事前にシミュレーションする
MOMの公式サイトにある「SAT」や、COMPASSの評価基準を使い、自分の学歴と現在の市場価値で何ポイント取れるかを事前に計算してください。足りない場合は、より高い給与を提示してくれる企業を探すか、不足しているスキルを補う必要があります。
2 日本人である強みを活かせる「ニッチ」な職種を狙う
英語ができるだけの一般職では現地採用のシンガポール人に勝てません。日系企業の海外展開支援、日本市場向けのマーケティング、日本食文化のスペシャリストなど、日本人でなければならない理由が明確な職種は、審査が通りやすくなります。
3 学歴の「認証」を早めに準備する
EP申請には、大学の卒業証明書を政府指定の第三者機関で認証する「学歴認証」が必要です。これには数週間から1ヶ月程度かかることが多いため、内定が出る前から母校への連絡や書類準備を済ませておきましょう。
シンガポール移住前に確認すべき就労ビザチェックリスト
渡航準備を始める前に、必ず以下の項目を確認してください。
- 自分の最終学歴と学位名
- 学位(Bachelor以上)がない場合、EPの取得は非常に難しくなります。専門学校卒の場合は、特筆すべき職歴や高い給与額が求められます。
- 内定先の「外国人枠」の有無
- Sパスでの採用になる場合、その企業が現在外国人を雇える枠(クォータ)を持っているか、人事担当者に確認が必要です。
- 家族帯同の可否
- 配偶者や子供を連れて行く場合、自分の給与が月6,000SGDを超えているかを確認します。両親を連れて行く場合は月12,000SGD以上が必要です。
- パスポートの残存期間
- ビザの期間はパスポートの有効期限に左右されます。残り1年を切っている場合は、日本で更新してから申請することをお勧めします。
シンガポール移住の就労ビザに関するよくある質問(FAQ)
Q1 ビザの承認までどのくらいの期間がかかりますか?
EPの場合、申請から通常10営業日から3週間程度で結果が出ます。ただし、追加の書類提出を求められた場合は、1ヶ月以上かかることもあります。
Q2 就労ビザから永住権(PR)は取れますか?
はい。EPやSパスで数年働いた後、PRを申請する権利が得られます。ただし、承認率は年々低下しており、シンガポールへの貢献度が厳しく見られます。
Q3 会社を解雇されたら、ビザはどうなりますか?
雇用が終了した時点でビザはキャンセルされます。その後は通常30日間の短期滞在許可に切り替わり、その期間内に新しい就職先を見つけるか、出国しなければなりません。
まとめ|シンガポール移住と就労ビザ取得の現実
シンガポールの就労ビザ取得は、以前のような「誰でも行ける」フェーズは終わり、明確な「選別」のフェーズに入っています。年収、学歴、スキルの三拍子が揃っていることが理想ですが、たとえ欠けている部分があっても、戦略的な職種選びや企業のサポートがあればチャンスは十分にあります。
最も重要なのは、制度を「知っている」こと。MOMのルールは予告なく変更されることが多いため、常に最新の情報をキャッチアップしてください。高い壁があるからこそ、それを乗り越えて手にするシンガポールでのキャリアは、あなたの人生にとって大きな資産になるはずです。一歩ずつ着実に準備を進め、理想の海外生活を手に入れてください。
